| 酒について知識をもちましょう。
一日の終わりにグラスや盃をかたむけるときの何ともいえない瞬間……せっかくならば素晴しい美酒、名酒を飲んでいただきたいと思います。
それには、酒について御自身が、ほんのちょっと勉強して(といってもそんなにむずかしく考えずに)知識を豊富に持って頂きたいと思います。ラベルに書かれているいろいろな表示をしっかりと見るだけでも、大変な勉強になります。酒を選ぶとき、「よく宣伝しているから」「有名だから」「有名な人が飲んでいるから」「新聞や雑誌で、評論家や著名人がうまいといっているから」といった理由で酒を選ぶのは、おかしいと思います。
広告宣伝力をもって販売されている酒のすべてが悪いとは言えませんが、その莫大な広告宣伝費はどこから稔出されるのかを考えれば、おのずから答えは出てくると思います。
昨今の地酒ブームを考えればちょっとうなずける点がありましょう。広告宣伝費にかける費用を品質向上のために使う地方の中小メーカーの日本酒が大手メーカーの酒より良質なものとなるのは当然ではないでしょうか。これが、酒の本質のわかる人にだんだん認められていった結果が、ブームといわれるまでになったと思います。
酒は百薬の長である反面、麻薬的要素をも合わせもつものです。また同時に、嗜好品としての最たるものであるならば、なおさらに、己の知性と理念によって、選び、買い、飲むべきものではないでしょうか。
自分が飲む酒を、自分がお金を払って飲むのです。有名人やいろいろな評論家の方達がおいしいとか秘酒だ、名酒だ、と言っているからといって、嗜好品の最たる酒を、その人の好みにならうというのはおかしな話です。酒を本質から知っていて、しかも公平な立場で酒について論評できる有名人や評論家はごくわずかだと思います。
蔵元めぐりのレポートや特集記事を書く目的で、新聞・難誌の記者やテレビのレポーターなどが酒蔵を訪問すれば、下にもおかぬ重厚なる接待を受けるのは当然でしょう。人情的にもなかなか悪くは言ったり書いたりはできなくなって、ついついほめ言葉が多くなってしまうことはしかたないと思います。したがって、酒に関する紹介記事や書物などを読む時にこのあたりの事情を頭に入れて、少し割引いて見たり読んだりすることが必要ではないでしょうか。人がなんと言おうと、自分が気に入った酒ならば楽しく飲めるし、うまいと思って飲めるのではないでしょうか。
酒を飲むのに、楽しむのに四角ばった能書きはいらないとは思いますが、本物とニセ物の区別や原材料について、必要最小限の知識は持っていただきたいと思います。酒を愛する方達が正しい知識を持ってくださることが、国の文化である酒、そして国際化の遅れている日本の酒の質を飛躍的に向上させる最大の近道であると思うからです。 |